灯台 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

灯台 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


読書という行為が他人の意識を追体験することだとすれば、P・D・ジェイムズは読書にうってつけの作家である。
本作でもダルグリッシュ、ケイト等々の登場人物の心象描写と彼らが目にした風景描写を、あるいは執拗とも言えるまでに追いかけさせられることになる。
解説にもあるように、本作の筋立ては一つであるが、それでも瑣末ともいえる物語が綺羅星のように一作品の中に散りばめられている。それができる作家がどのくらいいることだろうか。
もちろんミステリとしても完成度が高く、捻りが効いている。
二段組で400ページとなかなかのボリュームだが、夏休みに10月のイギリスの孤島へ旅をしようと思った人に是非読んでもらいたい。